簿記3級

【簿記3級・040】帳簿の締め切り(前編)損益勘定をやさしく解説

はるり

この記事について

前回は株式会社の設立として、株式を発行してお金を集めるしくみと仕訳を学びました。

今回は帳簿の締め切り(前編)です。生まれたばかりの会社が1年間活動したら、「今年のもうけはいくら?」を計算して、帳簿にひと区切りつける作業が待っています。前編では、その準備としてすべての収益と費用を1か所に集めるところまで進みますよ。

  • 帳簿の締め切りの全体の流れがわかります
  • 収益と費用の勘定残高を損益勘定へ振り替える仕訳ができます
  • 振替のあとの損益勘定のようすが読み取れるようになります

帳簿の締め切りとは

前回、ぼくの会社が生まれたんだよね。会社って、そのあとはずっと帳簿を書き続けるの?

書き続けるよ。でも、1年ごとに区切りをつけるんだ。1年が終わったら「今年のもうけはいくらだったのか」を計算して、帳簿にひと区切りつける。これを帳簿の締め切りというよ。

家計簿でも、年末に「今年は食費にいくら使ったんだろう」って集計したくなるもんね。あれの会社版?

いいたとえだね。まさにあれの会社版だよ。ただし会社の帳簿は、集計して終わりではなく、仕訳のルールにのっとって締め切るんだ。

それって、前に学んだ「決算」とは別の作業なの?

決算の一部だよ。決算のいちばん最後にやる総仕上げが、帳簿の締め切りなんだ。全体の流れを図で見てみよう。

📝 帳簿の締め切りの流れ
1収益・費用の残高を「損益勘定」へ集める(振替)今回はここ!
21年間のもうけ(当期純利益)を計算する次回(後編)
3もうけを純資産の勘定へ移す(振替)次回(後編)
4すべての勘定を締め切る次回(後編)

「損益勘定」って、はじめて聞く名前だ。それに「振替」ってなんだろう?

今回の主役2つに、いいところで気づいたね。まず言葉を整理しておこう。

  • 帳簿の締め切り…1年分の記録に区切りをつけて、帳簿を次の年に使える状態にすること
  • 損益(そんえき)勘定…収益と費用の残高を1か所に集めて、もうけを計算するための専用の勘定。決算のときだけ登場する

「振替」ってなにをすること?

締め切りの主役になる操作だから、先に「振替」の意味をおさえよう。振替(ふりかえ)とは、ある勘定の残高を別の勘定へ移すことだよ。

残高のお引っ越し、みたいなイメージ?どうやって移すの?

そのイメージでOK。手順は2つだけだよ。

  • ① 元の勘定の残高と反対側に同じ金額を記入して、残高をゼロにする
  • ② 行き先の勘定に、同じ金額を記入する
📝 振替のイメージ(売上の残高780,000円を損益勘定へ移す)
売上
① 780,000
を記入
残高
780,000
反対側に書いて残高ゼロに

引っ越し
損益
② 売上
780,000
行き先の勘定に記入
「残高と反対側に同じ金額を書く」と、その勘定はプラスマイナスゼロ。金額は消えたのではなく、行き先の損益勘定に引っ越しているよ。

あれ?「残高と反対側に書いて移す」のって、前にもやった気がする…。

よく思い出したね。現金過不足の残高を雑損や雑益に移したのが、まさに振替だったんだ。今回は同じことを、収益と費用のすべての勘定でやるよ。

収益の残高を損益勘定へ振り替える

ここからは、ぴよの会社の1年目で考えよう。売上が780,000円、受取手数料が20,000円だったとするよ。収益の残高は、どちら側に残っているかな?

収益が増えたら貸方(右)に書くんだったから…残高も貸方に残ってるはず!

そのとおり。だから振替の手順①で、反対側の借方に収益の科目を書いて残高を消す。そして手順②で、行き先の損益を貸方に書くんだ。

  • 収益の残高は貸方にある → 借方に収益の科目を書いて消す
  • 行き先の損益は貸方に書く
  • 収益の科目が複数あるときは、まとめて1本の仕訳にできる
例題① 収益の残高を損益勘定へ振り替えたとき
決算において、収益の各勘定残高(売上780,000円・受取手数料20,000円)を損益勘定に振り替えた。
借方(左)金額貸方(右)金額
売上 780,000 損益 800,000
受取手数料 20,000
計算:780,000円(売上)+ 20,000円(受取手数料)= 800,000円
✏️ 収益の科目がいつもと反対の借方に来るのが、振替仕訳の目印。これで売上と受取手数料の残高はゼロになり、金額は損益勘定の貸方に集まったよ。

売上を借方に書くの、なんだか変な感じがするなあ。

最初はみんなそう感じるよ。でも「売上が減った」わけじゃなくて、残高を消して損益へ引っ越しさせるために反対側へ書くだけなんだ。ここが今回いちばんのポイントだよ。

費用の残高を損益勘定へ振り替える

次は費用だよ。ぴよの会社の1年目、仕入が450,000円、給料が120,000円だったとしよう。費用の残高は借方にあるから、収益とぜんぶ左右が逆になるんだ。

じゃあ、貸方に費用の科目を書いて残高を消して…行き先の損益は借方に書くんだね。

完璧だね。それをそのまま仕訳にしてみよう。

例題② 費用の残高を損益勘定へ振り替えたとき
決算において、費用の各勘定残高(仕入450,000円・給料120,000円)を損益勘定に振り替えた。
借方(左)金額貸方(右)金額
損益 570,000 仕入 450,000
給料 120,000
計算:450,000円(仕入)+ 120,000円(給料)= 570,000円
✏️ 収益の振替と左右が逆になるだけ。「収益は損益の貸方へ、費用は損益の借方へ」とセットで覚えよう。

収益と費用の振替を、表で見くらべて整理しておこう。

収益の振替費用の振替
残高がある側 貸方(右) 借方(左)
科目を書いて消す側 借方(左) 貸方(右)
損益勘定は 貸方(右)に入る 借方(左)に入る
どちらも「残高と反対側に書いて消す→損益へ移す」は同じ。左右が対称になっているだけだよ。

これで収益も費用も、ぜんぶ損益勘定に集まったんだね。集めてどうするの?

集まった損益勘定の中がどうなっているか、次でのぞいてみよう。

転記後の損益勘定を見てみよう

例題①・②の振替仕訳を転記すると、損益勘定の中身はこうなるよ。

📝 損益勘定の中身(ぴよの会社の1年目)
損益
借方(費用)
3/31 仕入450,000
3/31 給料120,000
貸方(収益)
3/31 売上780,000
3/31 受取手数料20,000
転記のルールどおり、日付・相手勘定科目・金額を書き写しているよ。振替はすべて決算日に行うから、日付はどの行も3/31(ぴよの会社の決算日)になるんだ。

ほんとだ、日付・相手の勘定科目・金額のセットで書いてある。転記のルールどおりだね。…あれ?でも、左と右で合計がそろってないよ?

いいところに気づいたね。借方の費用は合計570,000円、貸方の収益は合計800,000円。じつはこの差額にこそ、「今年のもうけはいくら?」の答えがかくれているんだ。

えっ、どういうこと?差額の正体、はやく知りたい!

その正体の読み解きは、次回じっくりやろう。おたのしみにとっておいて、まずは今回のコツがつかめたか確認問題で試してみよう。

確認問題

それでは5問で確認してみよう。空欄をタップすると答えが出るよ。問5は前に学んだ現金過不足とつながる発展問題。全部開くと解説リンクが出てくるよ。

問1 収益の残高を振り替えたとき

問1
決算において、売上勘定の残高500,000円を損益勘定に振り替えた。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:収益の残高はどちら側にあるかな。残高をゼロにするには、同じ金額をどちら側に書くんだったかな。
📖 ここを読み返そう → 収益の残高を損益勘定へ振り替える

問2 費用の残高を振り替えたとき

問2
決算において、給料勘定の残高150,000円を損益勘定に振り替えた。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:費用の残高は収益と反対側にある。振替の向きも、問1とぜんぶ左右が逆になるよ。
📖 ここを読み返そう → 費用の残高を損益勘定へ振り替える

問3 収益が2つあるとき

問3
決算において、収益の各勘定残高(売上640,000円・受取利息10,000円)を損益勘定に振り替えた。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:収益の科目は残高と反対側に書いて消すんだったね。貸方の金額は2つの合計だよ。
📖 ここを読み返そう → 収益の残高を損益勘定へ振り替える

問4 費用が2つあるとき

問4
決算において、費用の各勘定残高(支払家賃240,000円・支払利息10,000円)を損益勘定に振り替えた。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:問3と左右がぜんぶ逆になるだけ。借方の金額は2つの合計だよ。
📖 ここを読み返そう → 費用の残高を損益勘定へ振り替える

問5 雑損もいっしょに振り替えたら?(発展)

問5(発展)
決算において、原因不明の現金過不足はすでに雑損勘定へ振り替えてある。費用の各勘定残高(仕入300,000円・雑損5,000円)を損益勘定に振り替えた。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:雑損は5つの要素のどれだったかな。それがわかれば、あとは問2と同じ考え方だよ。借方の金額は合計。
📖 雑損(現金過不足)の解説はこちら → 【簿記3級・038】現金過不足の仕訳をやさしく解説
📖 ここを読み返そう → 費用の残高を損益勘定へ振り替える

問5、雑損も費用の仲間だから、仕入といっしょに損益へ引っ越しさせるんだね。

そのとおり。どんな費用・収益でも、決算ではぜんぶ損益勘定に集まる。だから1年間のもうけが1か所で計算できるんだ。

まとめ

帳簿の締め切り:1年分の記録に区切りをつける、決算の総仕上げ。前編は「収益と費用を損益勘定へ集める」まで。

振替:ある勘定の残高を別の勘定へ移すこと。残高と反対側に同じ金額を書いて消し、行き先の勘定に記入する。

収益の振替:収益の科目を借方に書いて消し、損益勘定の貸方へ。

費用の振替:費用の科目を貸方に書いて消し、損益勘定の借方へ。

・損益勘定に集めると、借方(費用)と貸方(収益)の差額が見えてくる。そこに「1年間のもうけはいくら?」の答えがかくれている(正体は次回)。

損益勘定の借方と貸方の差額230,000円…この正体、はやく知りたいな。

次回は帳簿の締め切り(後編)だよ。差額の正体である1年間のもうけを計算して、その行き先の勘定へ移し、帳簿をパタンと閉じるところまでやろう。

後編は今回の損益勘定が主役の続きだから、振替があやしかったら、今回の確認問題をもう一度ためしてから来てね。

前の記事はこちら
【簿記3級・039】株式会社の設立の仕訳をやさしく解説
【簿記3級・039】株式会社の設立の仕訳をやさしく解説
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