簿記3級

【簿記3級・032】役員貸付金・役員借入金をやさしく解説

はるり

この記事について

前回は手形貸付金(てがたかしつけきん)・手形借入金(てがたかりいれきん)として、借用証書のかわりに約束手形を使ってお金を貸し借りする処理を学びました。

今回は役員貸付金(やくいんかしつけきん)・役員借入金(やくいんかりいれきん)です。会社が自分の役員にお金を貸す、または役員からお金を借りるときの処理を学びます。じつは、処理のしかたは数回前に学んだ貸付金・借入金とまったく同じで、相手が「役員」になるだけなんです。

  • 役員貸付金(資産)・役員借入金(負債)がどんなものかがわかります
  • 会社が役員に貸したとき・役員から借りたとき、それぞれの仕訳ができます
  • ふつうの貸付金・借入金との見分け方(相手で科目が変わること)がわかります

役員貸付金・役員借入金とは

会社が「役員」にお金を貸す…?会社と役員って、お金を貸し借りすることがあるの?

あるんだよ。会社が社長などの役員にお金を貸したり、逆に役員から借りたりすることがあるんだ。そのときに使う科目が今回のテーマだよ。

なるほど。じゃあ、貸す側と借りる側で科目が分かれるのは、前のときと同じなのかな?

そのとおり。立場でこう分かれるよ。

  • 会社が役員にお金を貸した→役員貸付金(やくいんかしつけきん/資産)
    …あとで役員から返してもらえる権利
  • 会社が役員からお金を借りた→役員借入金(やくいんかりいれきん/負債)
    …あとで役員に返さなければならない義務

あれ、これって貸付金・借入金に「役員」がついただけじゃない?わざわざ別の科目にする意味はあるの?

鋭いね。役員は会社にとって「特別な相手」だから、ふつうの取引先と区別して管理したいんだ。だから科目を分けるんだよ。

ふつうの取引先とはちがう特別な相手だから、いくら貸し借りしてるか分けて見えるようにしておくんだね。

そういうこと。じゃあ、全体の流れを図で見てみよう。

📝 役員貸付金・役員借入金の2つの場面
① お金を貸す・借りるとき
貸した側(会社)役員貸付金(資産)が増える
現金などを渡す →
← あとで返す約束
借りた側(会社)役員借入金(負債)が増える
② 返済のとき
貸した側(会社)返ってくる=役員貸付金(資産)が減る
← お金を返す
借りた側(会社)返す=役員借入金(負債)が減る
役員貸付金・役員借入金は、ふつうの貸付金・借入金と処理がまったく同じ。お金を貸して(借りて)、あとで返すだけなんだ。

ほんとに貸付金・借入金とおんなじ流れだね。シンプルだ。

そう。貸付金・借入金と同じやり方でいけるよ。それじゃあ、会社が貸した側から順番に仕訳を見ていこう。

会社が貸した側(役員貸付金)の処理

役員にお金を貸したとき

当社が役員にお金を貸す場面だよ。ふつうの貸付金とまったく同じで、科目が役員貸付金になるだけだね。

例題① 役員にお金を貸したとき(貸した側)
当社は、役員に対して現金1,000,000円を貸し付けた。
借方(左)金額貸方(右)金額
役員貸付金 1,000,000 現金 1,000,000
✏️ ポイントは、相手が役員だから科目を役員貸付金にすること。処理のしかたはふつうの貸付金とまったく同じで、現金が出ていって、あとで返してもらう権利が増えるよ。

ほんとに「貸付金」が「役員貸付金」になっただけだ!

そう。次は返済を受ける場面を見てみよう。

役員から返済を受けたとき

満期日に、貸したお金が返ってくる場面だよ。役員貸付金(資産)を減らすだけだから、かんたんだね。

例題② 役員から返済を受けたとき(貸した側)
例題①で役員に貸し付けた1,000,000円について、満期日に当座預金口座に入金された。
借方(左)金額貸方(右)金額
当座預金 1,000,000 役員貸付金 1,000,000
✏️ ポイントは、返してもらったら役員貸付金(資産)を消すこと。貸したお金がそのまま返ってくるイメージで、お金は当座預金に入るよ。

貸したときに増やした役員貸付金を、返ってきたら消すんだね。すっきり!

そのとおり。今度は反対の立場、会社が借りた側を見てみよう。

会社が借りた側(役員借入金)の処理

役員からお金を借りたとき

今度は当社が役員からお金を借りる場面だよ。例題①の鏡で、科目は役員借入金になるね。

例題③ 役員からお金を借りたとき(借りた側)
当社は、役員から現金1,000,000円を借り入れた。
借方(左)金額貸方(右)金額
現金 1,000,000 役員借入金 1,000,000
✏️ ポイントは、相手が役員だから科目を役員借入金にすること。手元の現金が増えて、あとで返す義務が増えるよ。例題①の左右がそっくり入れかわった形だね。

ほんとだ、例題①の左右がそっくり逆になってる!借りた側は役員借入金が増えるんだね。

そう、同じ1件を借りた側から見ているからね。次は返済の場面だよ。

役員に返済したとき

最後は満期日。役員に借りたお金を返す場面だよ。役員借入金(負債)を減らすだけだね。

例題④ 役員に返済したとき(借りた側)
例題③で役員から借り入れた1,000,000円について、満期日に当座預金口座から支払った。
借方(左)金額貸方(右)金額
役員借入金 1,000,000 当座預金 1,000,000
✏️ ポイントは、返したら役員借入金(負債)を消すこと。借りたときに増やした義務がなくなって、お金は当座預金から出ていくよ。例題②の鏡だね。

4つの仕訳、ぜんぶ役員貸付金か役員借入金を増やしたり減らしたりするだけだったね。

その通り。ここまでくれば、あとはふつうの貸付金・借入金との「ちがい」を整理するだけだね。

ふつうの貸付金・借入金とのちがい

結局、ふつうの貸付金・借入金と今回の役員のやつ、どこがちがうの?

ちがうのは相手だけ。相手が役員になるから、科目に「役員」がつくんだ。処理のしかたはまったく同じだよ。表で見くらべてみよう。

ふつうの貸付金・借入金(これまで)役員貸付金・役員借入金(今回)
相手 取引先・銀行など 自社の役員
使う科目 貸付金(資産)
借入金(負債)
役員貸付金(資産)
役員借入金(負債)
処理のしかた 貸す(借りる)→返済で消す まったく同じ

ほんとに相手と科目名がちがうだけだ!じゃあ、見分けるポイントは相手が役員かどうか、だね。

そのとおり。相手が役員なら役員貸付金・役員借入金、取引先や銀行ならふつうの貸付金・借入金。コツがつかめたか、確認問題で試してみよう。

確認問題

それでは5問で確認してみよう。空欄をタップすると答えが出るよ。「会社は貸した側か借りた側か」「相手は役員かどうか」を意識してね。最後の問5は、ちょっとした見分け問題だよ。全部開くと、解説リンクが出てくるよ。

問1 役員にお金を貸したとき

問1
当社は、役員に対して現金700,000円を貸し付けた。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:お金を貸した相手はだれかな?相手によって使う科目が変わるよ。
📖 貸付金・借入金(処理の基本)の解説はこちら → 【簿記3級・030】貸付金・借入金をやさしく解説

問2 役員から返済を受けたとき

問2
問1で役員に貸し付けた700,000円について、満期日に当座預金口座に入金された。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:貸したときに増やしたものは、返ってきたらどうなるかな?代金はどこに入る?
📖 貸付金・借入金(処理の基本)の解説はこちら → 【簿記3級・030】貸付金・借入金をやさしく解説
📖 当座預金の解説はこちら → 【簿記3級・009】当座預金ってなに?小切手の仕訳をやさしく解説

問3 役員からお金を借りたとき

問3
当社は、役員から現金500,000円を借り入れた。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:今度は会社が借りる側。問1と借方・貸方が逆になることを意識しよう。
📖 貸付金・借入金(処理の基本)の解説はこちら → 【簿記3級・030】貸付金・借入金をやさしく解説

問4 役員に返済したとき

問4
問3で役員から借り入れた500,000円について、満期日に当座預金口座から支払った。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:借りたときに増やしたものは、返したらどうなるかな?代金はどこから払う?
📖 貸付金・借入金(処理の基本)の解説はこちら → 【簿記3級・030】貸付金・借入金をやさしく解説
📖 当座預金の解説はこちら → 【簿記3級・009】当座預金ってなに?小切手の仕訳をやさしく解説

問5 取引先にお金を貸したとき(見分け問題)

問5
当社は、取引先のG社に対して現金600,000円を貸し付けた。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:貸した相手は役員かな、それともふつうの取引先かな。相手で使う科目が変わるよ。
📖 貸付金・借入金(処理の基本)の解説はこちら → 【簿記3級・030】貸付金・借入金をやさしく解説

できた!問5は相手が取引先だから、ふつうの貸付金なんだね。相手が役員かどうかで見分けるんだ。

その通り!処理はふつうの貸付金・借入金とまったく同じ。相手が役員なら役員貸付金・役員借入金を使う、ここを押さえれば大丈夫だよ。

まとめ

役員貸付金・役員借入金のポイント

役員貸付金(資産):会社が役員にお金を貸して、あとで返してもらえる権利。

役員借入金(負債):会社が役員からお金を借りて、あとで返さなければならない義務。

・処理はこれまでに学んだ貸付金・借入金とまったく同じで、ちがいは「相手が役員になること」だけ。役員なら役員貸付金・役員借入金、取引先や銀行ならふつうの貸付金・借入金を使う(役員は特別な相手なので、区別して管理するために科目を分ける)。

・貸した(借りた)ときに役員貸付金・役員借入金が増え、返済のときに減る

相手が役員になるだけって聞いてたけど、ほんとだった!前回までの貸付金・借入金で覚えたことがそのまま使えて、すんなり覚えられたよ。

それはよかった。

次回は未収入金(みしゅうにゅうきん)・未払金(みばらいきん)について学ぼう。商品以外のものを売り買いしたときの、まだもらっていない代金・まだ払っていない代金を表す科目だよ。売掛金・買掛金とのちがいがポイントになるよ。

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