【簿記3級・039】株式会社の設立の仕訳をやさしく解説
この記事について
前回は現金過不足として、帳簿の残高と実際のお金が合わないときの処理を学びました。
今回は株式会社の設立です。これまで仕訳の主役だった「会社」が、そもそもどうやって生まれるのか?というお話です。ニュースでよく聞く「株式」の正体も、ここでスッキリしますよ。
- 株式会社と株式のしくみがわかります
- 会社の設立や増資で株式を発行したときの仕訳(資本金)ができます
- 保証金(敷金)を差し入れたときの仕訳(差入保証金)ができます
株式会社とは

「株式会社」って名前はよく見るけど、じつはどんな会社なのか、ちゃんとわかってないかも…。

大丈夫、順番に見ていこう。会社が事業を始めるには、まとまったお金=元手が必要だよね。ぴよなら、そのお金をどうやって集める?

うーん、前に学んだ「借入金」みたいに、銀行から借りるとか?でも借りたお金は返さなきゃいけないんだよね。

よく覚えていたね。そこでもうひとつの集め方が、株式(かぶしき)を発行する方法なんだ。「わたしたちの会社にお金を出してくれたら、その証明書を渡します」という集め方だよ。
- 株式…会社にお金を出してくれた人に渡す、「出資してくれた証明」
- 株主(かぶぬし)…株式を持っている人。株主総会(会社の大事なことを決める話し合い)に参加できる、会社のオーナー(持ち主)にあたる
- 株式会社…株式を発行してお金を集め、そのお金で事業をする会社

そして、ここからが驚きポイント。株主から出してもらったこのお金は、借入金とちがって返さなくていいんだ。

えっ、返さなくていいの!?返してもらえないのにお金を出してくれるなんて…株主になると、なにかいいことでもあるの?

いい質問だね。会社が事業でもうけを出したら、その一部を配当(はいとう)として株主に分けるんだ。図で全体のしくみを見てみよう。
(会社のオーナー)
事業をする

お金を借りるのとは、だいぶちがうんだね。

そのとおり。同じ「お金を集める」でも性格がぜんぜんちがうんだ。既に学んだ借入金と見くらべて整理しておこう。
| 借入金(既出) | 株式の発行(今回) | |
|---|---|---|
| お金の出し手 | 銀行など(貸してくれる人) | 株主(オーナーになる人) |
| 返す義務 | ある(期日までに返済) | ない |
| お礼 | 利息を支払う | もうけの一部を配当する |
| 帳簿では | 借入金(負債) | 資本金(純資産) |

表に「資本金」って出てきたね。これが今回の主役の勘定科目?

そのとおり。それじゃあここからは、ぴよが会社をつくるつもりで、設立のときの仕訳を見ていこう。
設立時に株式を発行したとき

株式会社を設立するときは、株式を発行して、株主からお金を払い込んでもらうんだ。このとき、払い込まれた金額は原則として全額を資本金にするよ。
- 資本金(しほんきん)…株主から出資されたお金を記録する、純資産の勘定科目
- 払い込まれた金額は、原則として全額を資本金にする
- 払込金額は「1株あたりの金額 × 株数」で計算する
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 1,000,000 | 資本金 | 1,000,000 |

お金が入ってくるのは借入金と同じなのに、貸方が負債じゃなくて純資産になるんだね。

そこに気づけたらもう大丈夫。返さなくていい元手だから、負債ではなく純資産になるんだ。ちなみに「原則として全額」と言ったのは、2級以上では一部を資本金にしない方法も出てくるからだよ。3級は全額資本金でOK。
増資をしたとき

ぼくの会社、あとからお金が足りなくなったらどうしよう。株式を発行できるのは、会社が生まれるときの1回だけなの?

いい質問だね。設立したあとでも、事業を大きくするお金が必要になったら、新たに株式を発行して集められるんだ。これを増資(ぞうし)というよ。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 600,000 | 資本金 | 600,000 |

設立と増資、場面はちがっても仕訳は同じなんだね。これなら覚えられそう!

その調子だよ。さて、ぴよの会社が生まれて、お金も集まった。でも、まだ肝心なものが足りないよ。ぴよはどこで仕事をするの?
保証金を差し入れたとき

あっ、たしかに場所がない!じゃあ、事務所を借りなきゃ。

そうだね。事務所やお店を借りる契約をするとき、大家さんに保証金(敷金)を預けるんだ。アパートを借りるときの敷金と同じだと思えばいいよ。

敷金なら知ってるよ。部屋を出ていくときに、返してもらえるお金だよね。

そのとおり。正確には、退去のときに部屋を元に戻す費用(原状回復費用)が差し引かれて、残りが返ってくるんだ。この「あとで返してもらえるお金」は費用ではなく資産で、差入保証金(さしいれほしょうきん)という勘定科目で記録するよ。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 差入保証金 | 200,000 | 現金 | 200,000 |

同じ「大家さんに払うお金」でも、返ってこない家賃は費用で、返ってくる保証金は資産…。行き先で分けるんだね。

すばらしい整理だね。それじゃあ、コツがつかめたか確認問題で試してみよう。
確認問題

それでは5問で確認してみよう。空欄をタップすると答えが出るよ。問5は費用の科目とつながる発展問題。全部開くと解説リンクが出てくるよ。
問1 設立時に株式を発行したとき
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |
問2 設立時に株式を発行したとき(別パターン)
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |
問3 増資をしたとき
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |
問4 保証金を差し入れたとき
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |
問5 敷金と家賃をまとめて払ったら?(発展)
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |
| ? | ? |

問5、まとめて払っても、返ってくるお金と返ってこないお金は別の科目に分けるんだね。

そのとおり。「そのお金はどんな性格か」で科目を決めるのは、簿記全体に通じる考え方だよ。
まとめ
・株式会社:株式を発行して株主からお金を集め、そのお金で事業をする会社。出資されたお金は返さなくてよく、株主にはもうけの一部を配当する。
・設立時に株式を発行したとき:払込金額(1株あたりの金額×株数)は、原則として全額を資本金(純資産)にする。
・増資をしたとき:設立後に新たに株式を発行しても、仕訳は設立のときと同じ。
・保証金を差し入れたとき:あとで返してもらえるお金なので、差入保証金(資産)で記録する。返ってこない家賃(費用)とは分ける。

株式会社って、株主が出してくれたお金から生まれるんだね。ニュースの「株」の話が、ちょっと身近になった気がするよ。

それはよかった。
次回は帳簿の締め切りを学ぼう。今日生まれた会社が1年間活動したら、もうけがいくらだったのかを計算して、帳簿にひと区切りつける作業が待っているんだ。決算の総仕上げだよ。

