簿記3級

【簿記3級・037】立替金・預り金と給料の仕訳をやさしく解説

はるり

この記事について

前回は消費税(しょうひぜい)として、お客さんから預かった消費税を、会社があとでまとめて納める流れを学びました。

今回は立替金(たてかえきん)・預り金(あずかりきん)です。従業員などのお金を、会社が一時的に立て替えたり預かったりしたときの処理で、毎月の給料の仕訳が大きな舞台になります。消費税で学んだ「預かって、あとで納める」考え方が、ここでも登場しますよ。

  • 立替金(資産)・預り金(負債)がどんなものかがわかります
  • 給料を支払ったとき(源泉所得税や社会保険料を差し引くとき)の仕訳ができます
  • 預かった所得税・社会保険料を納付したときの仕訳ができます

立替金・預り金とは

「立替金」と「預り金」?ひさしぶりに「仮」がつかない名前だね。

そうだね。でも実は、「仮」のついた科目のときと考え方は一緒なんだよ。どちらも、従業員などのお金を会社が一時的に立て替えたり、預かったりしたときの科目なんだ。

会社が、だれかのお金を代わりに払ったり、預かったりすることってあるの?

じつは毎月のお給料でおなじみなんだよ。整理するとこう分かれるんだ。

  • 本来は従業員などが払うべきお金を、会社が代わりに払った→立替金(たてかえきん/資産)
    …あとで返してもらえる権利
  • 従業員などが税務署や年金機構などに払うべきお金を、会社が一時的に預かった→預り金(あずかりきん/負債)
    …あとで本人に代わって納める義務

立て替えたら「返してもらえる権利」だから資産、預かったら「代わりに納める義務」だから負債なんだね。

そのとおり。どんな場面で使うのか、全体の流れを図で見てみよう。

📝 立替金・預り金の4つの場面
① 立て替えたとき従業員が払うべきお金(生命保険料など)を、会社が代わりに払う→ 立替金(資産)が増える
② 返してもらったとき立て替えたお金を、従業員から現金などで返してもらう ※給料から差し引く形もあるよ(③で登場)→ 立替金(資産)が減る
③ 給料を支払ったとき(給料日)ここが中心!給料から、所得税・社会保険料を差し引いて支払う→ 差し引いた分は預り金(負債)に
④ 納付したとき(給料日のあと)預かった所得税・社会保険料を、従業員に代わって納める→ 預り金(負債)が減る
前半の①②が立替金、後半の③④が預り金の場面だよ。③で「預かって、④であとから代わりに納める」流れは、消費税とそっくりだね。

前半の①②が立替金で、後半の③④が預り金のお話なんだね。

いいまとめだね。それじゃあ①の立替金から、順番に仕訳を見ていこう。

立替金(資産)の処理

お金を立て替えたとき

従業員が入っている保険の保険料を、会社がいったんまとめて払ってあげる場面だよ。会社を通じて払うと割引になる保険などで、実際によくあるんだ。

例題① お金を立て替えたとき
当社は、従業員が負担すべき生命保険料10,000円を、現金で立て替えて支払った。
借方(左)金額貸方(右)金額
立替金 10,000 現金 10,000
✏️ ポイントは、会社の費用にしないこと。本来は従業員が払うべきお金だから、あとで返してもらえる立替金(資産)として記録するよ。

会社のお金は減ったけど、そのぶん「返してもらえる権利」が増えたんだね。

そういうこと。だから売掛金や貸付金と同じ資産の仲間なんだ。従業員への立替だとわかるように「従業員立替金」と呼ぶこともあるよ。

返してもらったとき

従業員から立て替えたお金を返してもらったら、立替金を減らすだけ。シンプルだよ。

例題② 返してもらったとき
例題①で立て替えた生命保険料10,000円を、従業員から現金で返してもらった。
借方(左)金額貸方(右)金額
現金 10,000 立替金 10,000
✏️ ポイントは、回収したら立替金(資産)を減らすこと。売掛金を回収したときと同じ形だね。

立て替えて、返してもらって、おしまい。これならわかりやすいね。

じつは現金で返してもらう代わりに、給料から差し引く形で回収することも多いんだ。それは給料の仕訳のところで見てみよう。

給料を支払ったとき(預り金の処理)

ここからが今回の主役、給料の仕訳だよ。ぴよ、給与明細って見たことある?

あるよ!お給料の金額から、所得税とか社会保険料とかがいろいろ引かれて、手取りが少なくなってるやつ…。

その差し引かれた所得税や社会保険料は、会社がいったん預かって、あとで本人に代わって国などに納めているんだ。このしくみを源泉徴収(げんせんちょうしゅう)というよ。

引かれたお金は消えてたんじゃなくて、会社が預かって、代わりに納めてくれてたんだ…!

所得税・社会保険料を差し引いて支払ったとき

それじゃあ給料日の仕訳だよ。差し引いた所得税は所得税預り金、社会保険料は社会保険料預り金という預り金の科目で記録するんだ。

例題③ 給料を支払ったとき
当社は、従業員への給料300,000円につき、源泉所得税9,000円と社会保険料27,000円を差し引き、残額264,000円を当座預金口座から支払った。
借方(左)金額貸方(右)金額
給料 300,000 所得税預り金 9,000
社会保険料預り金 27,000
当座預金 264,000
計算:300,000円(給料の総額)− 9,000円(源泉所得税)− 27,000円(社会保険料)= 264,000円(手取り額)
✏️ ポイントは、給料(費用)は差し引く前の総額で計上すること。差し引いた所得税・社会保険料は、あとで納める預り金(負債)にするよ。

給料の費用は、手取りの264,000円じゃなくて総額の300,000円なんだね。

そこが最重要ポイント。会社が従業員のために払うお金は総額の300,000円で、そのうち一部を本人に代わって預かっているだけなんだ。

「◯◯預り金」がいっぱい出てきたけど、ただの「預り金」じゃダメなの?

そうだね、まとめて「預り金」として扱うこともあるよ。試験では問題文に使える勘定科目が指定されるから、問題文をよく確認してね。

立替金の回収もあわせて行うとき

さっき予告した、立て替えたお金を給料から差し引いて回収する形も見ておこう。貸方に立替金が加わるだけだよ。

例題④ 立替金を差し引いて給料を支払ったとき
当社は、従業員への給料300,000円につき、かねて立て替えていた従業員負担の生命保険料10,000円、源泉所得税9,000円、社会保険料27,000円を差し引き、残額254,000円を当座預金口座から支払った。
借方(左)金額貸方(右)金額
給料 300,000 立替金 10,000
所得税預り金 9,000
社会保険料預り金 27,000
当座預金 254,000
計算:300,000円(給料の総額)− 10,000円(立替金の回収)− 9,000円(源泉所得税)− 27,000円(社会保険料)= 254,000円(手取り額)
✏️ 例題③とくらべると、ちがいは貸方に立替金が1行加わったことだけ。給料から差し引くことで、立替金(資産)を回収しているんだね。

差し引かれる側はちょっと切ないけど、仕訳は「貸方に立替金を足すだけ」なんだね。

そのとおり。それじゃあ最後の場面、預かったお金を納める仕訳を見てみよう。

預り金を納付したとき

源泉所得税を納付したとき

給料から差し引いた源泉所得税は、あとで会社が税務署に納めるよ。納めたら、預り金を減らすんだ。

例題⑤ 源泉所得税を納付したとき
当社は、例題③で給料から差し引いた源泉所得税9,000円を、税務署に現金で納付した。
借方(左)金額貸方(右)金額
所得税預り金 9,000 現金 9,000
✏️ ポイントは、納付したら所得税預り金(負債)を減らすこと。「預かって、あとで代わりに納める」が、これで完了だよ。

社会保険料を納付したとき

社会保険料には、ひとつ特徴があるんだ。じつは全額を従業員が負担しているわけではなくて、会社も同じ額を負担しているんだよ。

え、そうなの?ぼくの保険料を、会社も一緒に払ってくれてるの?

そうなんだ。だから納付するときは、2つを合わせて納めることになるよ。

  • 従業員負担分…給料から差し引いて預かった分
    → 社会保険料預り金(負債)を減らす
  • 会社負担分…従業員と同じ額を、会社が負担する分(折半・せっぱん)
    法定福利費(ほうていふくりひ/費用)で計上する
例題⑥ 社会保険料を納付したとき
当社は、例題③で給料から差し引いた社会保険料27,000円(従業員負担分)に、会社負担分27,000円をあわせた54,000円を、現金で納付した。
借方(左)金額貸方(右)金額
社会保険料預り金 27,000 現金 54,000
法定福利費 27,000
計算:27,000円(従業員負担分・預り金)+ 27,000円(会社負担分・法定福利費)= 54,000円(納付額)
✏️ ポイントは、従業員負担分は社会保険料預り金(負債)を減らし、会社負担分は法定福利費(費用)にすること。同じ納付でも、性格がちがう2つが並ぶんだね。

預かったお金を納めるのと、会社が自分の費用を払うのが、1本の仕訳に同居してるんだね。

いいまとめだね。あとは、名前も役割も似ている仮払金・仮受金とのちがいを整理すれば完璧だよ。

仮払金・仮受金とのちがい

そういえば、従業員にお金を渡す場面は仮払金でも出てきたよね。立替金とどう見分けるの?

いい質問だね。見分けるカギは「本来だれが負担するお金か」。表で見くらべよう。

仮払金・仮受金(既出)立替金・預り金(今回)
使う場面 出張旅費の概算払い、内容不明の入金など 従業員のお金の立て替え、給料からの差し引きなど
だれのお金か 会社のお金(内容や金額が未確定) 従業員など本人のお金(だれの何のお金かはっきりしている)
あとの処理 確定したら正しい科目に振り替える 返してもらう・本人に返す・本人に代わって納める
※たとえば同じ「従業員に先に渡すお金」でも、会社の旅費になる予定で金額未確定なら仮払金、本来従業員が払うべきものを代わりに払ったなら立替金だよ。

仮払金・仮受金は「中身が未確定な会社のお金」、立替金・預り金は「はっきりしている本人のお金」なんだね。

そのとおり。コツがつかめたか、確認問題で試してみよう。

確認問題

それでは6問で確認してみよう。空欄をタップすると答えが出るよ。「だれのお金か」を毎回考えてね。問6は仮払金との見分けを試す発展問題。全部開くと解説リンクが出てくるよ。

問1 お金を立て替えたとき

問1
当社は、従業員が負担すべき生命保険料8,000円を、現金で立て替えて支払った。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:本来は従業員が払うべきお金だから、会社の費用にはしないよ。あとで返してもらえるお金は、どの科目だったかな。

問2 給料を支払ったとき

問2
当社は、従業員への給料250,000円につき、源泉所得税8,000円と社会保険料22,000円を差し引き、残額を当座預金口座から支払った。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:給料(費用)は差し引く前の総額で計上するんだったね。差し引いた税金や保険料は、どの科目に置いておくんだったかな。

問3 立替金を差し引いて給料を支払ったとき

問3
当社は、問1の従業員への給料260,000円につき、立て替えていた生命保険料8,000円と源泉所得税9,000円を差し引き、残額を現金で支払った。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:立て替えていたお金を、給料から差し引いて回収する形だよ。回収したら、立て替えたときに増やした資産をどうするんだったかな。

問4 源泉所得税を納付したとき

問4
当社は、問2で給料から差し引いた源泉所得税8,000円を、税務署に現金で納付した。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:預かっていたお金を、本人に代わって納めたよ。負債が減るときは、借方・貸方のどちらだったかな。

問5 社会保険料を納付したとき

問5
当社は、問2で給料から差し引いた社会保険料22,000円(従業員負担分)に、会社負担分22,000円をあわせた44,000円を、当座預金口座から納付した。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:従業員から預かった分と、会社が負担する分をあわせて納めるよ。会社負担分は、どの費用の科目にするんだったかな。

問6 立替金?それとも…?(発展)

問6(発展)
当社は、従業員の出張にあたり、旅費の概算額30,000円を現金で前渡しした。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:従業員に先に渡したお金だけど、これは会社の旅費になる予定で、金額もまだ確定していないね。立替金とのちがいを思い出そう。
📖 仮払金・仮受金の解説はこちら → 【簿記3級・034】仮払金・仮受金をやさしく解説

問6、立替金って答えそうになったよ!同じ「先に渡すお金」でも、会社の費用になる予定で未確定なら仮払金なんだね。

よく気づけたね。「本来だれが負担するお金か」で見分けるのがコツ。従業員が払うべきものなら立替金、会社のお金で中身が未確定なら仮払金だよ。

まとめ

立替金(資産):本来は従業員などが払うべきお金を、会社が代わりに払ったもの。あとで現金で返してもらうか、給料から差し引いて回収する。

預り金(負債):給料から差し引いた源泉所得税や社会保険料など、あとで納めるために一時的に預かったお金。本人に代わって納付したら、預り金を減らす。

給料の仕訳:給料(費用)は、差し引く前の総額で計上する。社会保険料を納付するときは、従業員負担分(社会保険料預り金)と同じ額の会社負担分(法定福利費/費用)をあわせて納める。

・中身が未確定な仮払金・仮受金とは、「本来だれが負担するお金か」で見分ける。

毎月の給与明細に、立替金も預り金も源泉徴収もぜんぶ詰まってたんだね。今度のお給料日に、明細をじっくり見てみるよ!

それはよかった。

次回は現金過不足(げんきんかぶそく)について学ぼう。帳簿の上の現金と、実際のお金が合わない!というときの処理だよ。ここでも「いったん仮に置いておく」考え方が活躍するんだ。

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【簿記3級・036】消費税の仕訳をやさしく解説
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ちょっとでも明るい明日になりますようにと学び始めた簿記やFPについての知識をまとめています。

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