簿記3級

【簿記3級・038】現金過不足の仕訳をやさしく解説

はるり

この記事について

前回は立替金・預り金として、従業員などのお金を会社が一時的に立て替えたり預かったりしたときの処理を学びました。

今回は現金過不足(げんきんかぶそく)です。帳簿の上の現金と、実際にあるお金が合わない!というときの処理で、仮払金・仮受金で学んだ「いったん仮に置いておいて、はっきりしたら正しい科目に振り替える」考え方が、ここでも主役になりますよ。

  • 現金過不足がどんなものかがわかります
  • 帳簿の残高と実際のお金が合わないことに気づいたとき・原因がわかったときの仕訳ができます
  • 決算まで原因がわからなかったとき(雑損・雑益)の仕訳ができます

現金過不足とは

帳簿と実際のお金が合わないことなんて、あるの?ちゃんと記録してるのに?

それが、あるんだよ。記帳のもれや金額のまちがい、おつりの渡しまちがいなど、原因はさまざま。金庫やレジのお金を数えてみたら、帳簿の残高と合わない…というのは実務でもよく起こるんだ。

  • 帳簿残高(ちょうぼざんだか)…帳簿の上での現金の残高
  • 実際有高(じっさいありだか)…実際に手もとにある現金の金額
  • この2つが一致しないときの差額を現金過不足という勘定科目でいったん記録する

合わないとき、帳簿と実際のお金、どっちに合わせるの?

実際にあるお金が事実だから、帳簿を実際有高に合わせるんだ。そのときの相手役が現金過不足だよ。全体の流れを図で見てみよう。

📝 現金過不足の3つの場面
① 不一致を見つけたときここが中心!帳簿残高と実際有高が合わないことに気づく→ 帳簿を実際有高に合わせ、差額を現金過不足に
② 原因が判明したとき調べていた原因がわかる(記帳もれなど)→ 正しい科目に振り替える(現金過不足が減る)
③ 決算まで原因不明のとき決算日になっても原因がわからない→ 雑損(費用)または雑益(収益)に振り替える
現金過不足はあくまで一時的な置き場所。②か③で必ず振り替えられて、決算のあとには残らないんだ。仮払金・仮受金と同じ「いったん仮に置く」仲間だね。

「いったん現金過不足に置いておいて、はっきりしたら振り替える」って流れなんだね。ほんとに仮払金・仮受金にそっくり!

いいところに気づいたね。それじゃあ①の「不一致を見つけたとき」から、順番に仕訳を見ていこう。

不一致を見つけたとき

実際のお金が少なかったとき

まずは、数えてみたら実際のお金のほうが少なかった場合。帳簿の現金を減らして、実際有高に合わせるよ。

例題① 実際のお金が少なかったとき
現金の帳簿残高は10,000円であるが、実際有高を調べたところ9,000円であった。
借方(左)金額貸方(右)金額
現金過不足 1,000 現金 1,000
計算:10,000円(帳簿残高)− 9,000円(実際有高)= 1,000円(足りない差額)
✏️ ポイントは、先に現金から考えること。実際有高に合わせるために現金(資産)を1,000円減らす→貸方に現金。空いた借方に現金過不足を置くよ。

「現金過不足はどっちに書くんだっけ?」って迷いそうだけど、先に現金の増減を書いちゃえば、現金過不足は空いた側に入れるだけなんだね。

そのとおり、それがいちばんのコツだよ。じゃあ逆に、実際のお金のほうが多かった場合も見てみよう。

実際のお金が多かったとき

例題② 実際のお金が多かったとき
現金の帳簿残高は10,000円であるが、実際有高を調べたところ10,500円であった。
借方(左)金額貸方(右)金額
現金 500 現金過不足 500
計算:10,500円(実際有高)− 10,000円(帳簿残高)= 500円(多い差額)
✏️ 今度は実際有高に合わせるために現金(資産)を500円増やす→借方に現金。現金過不足は空いた貸方に置くよ。考え方は例題①と同じだね。

少なくても多くても、「現金を実際有高に合わせて、反対側に現金過不足」でいいんだね。

そういうこと。ただ、これで解決したわけじゃないよ。差額の正体はまだわかっていないから、会社は原因を調べ続けるんだ。

原因が判明したとき

調べた結果、原因がわかったら、現金過不足から正しい科目に振り替えるよ。仮払金の内容が確定したときと同じ考え方だね。

例題③ 不足の原因が判明したとき
例題①で生じた現金過不足1,000円(借方残高)のうち、800円は通信費の支払いの記帳もれであることが判明した。
借方(左)金額貸方(右)金額
通信費 800 現金過不足 800
✏️ ポイントは、判明した分だけ現金過不足を減らすこと。借方に置いていた現金過不足を貸方に書いて減らし、本来記録すべきだった通信費(費用)を借方に計上するよ。

通信費を払ったのに書き忘れてたから、実際のお金のほうが少なかったんだね。書き忘れていた通信費を、あとから記録したってことか。

いい理解だね。補足すると、現金はもう例題①で実際有高に直してあるから、ここでは動かさないよ。多かった側の原因が判明した場合も見ておこう。

例題④ 過剰の原因が判明したとき
例題②で生じた現金過不足500円(貸方残高)のうち、400円は売掛金を現金で回収した際の記帳もれであることが判明した。
借方(左)金額貸方(右)金額
現金過不足 400 売掛金 400
✏️ 今度は貸方に置いていた現金過不足を借方に書いて減らすよ。売掛金を回収していたのに減らし忘れていたから、あとから売掛金(資産)を減らすんだね。

あれ?でも例題③は800円、例題④は400円しか判明してないよ。残りはどうなるの?

いいところに気づいたね。その「最後まで原因がわからなかった分」の行き先が、次の場面だよ。

決算まで原因不明のとき

現金過不足は一時的な置き場所だから、決算日をむかえたら帳簿に残しておけないんだ。原因がわからないままの分は、こう振り替えるよ。

  • お金が足りなかったまま原因不明(現金過不足が借方残高)
    雑損(ざっそん/費用)に振り替える
  • お金が多かったまま原因不明(現金過不足が貸方残高)
    雑益(ざつえき/収益)に振り替える
例題⑤ 不足の原因が決算まで不明のとき
決算日をむかえたが、現金過不足の借方残高200円(例題①の1,000円のうち原因不明の分)については、原因が判明しなかった。
借方(左)金額貸方(右)金額
雑損 200 現金過不足 200
計算:1,000円(不足の差額)− 800円(通信費と判明)= 200円(原因不明のまま)
✏️ ポイントは、足りない分は会社の損=雑損(費用)にすること。これで現金過不足の残高はゼロになるよ。
例題⑥ 過剰の原因が決算まで不明のとき
決算日をむかえたが、現金過不足の貸方残高100円(例題②の500円のうち原因不明の分)については、原因が判明しなかった。
借方(左)金額貸方(右)金額
現金過不足 100 雑益 100
計算:500円(多い差額)− 400円(売掛金の回収と判明)= 100円(原因不明のまま)
✏️ 多かった分は会社のもうけ=雑益(収益)にするよ。こちらも現金過不足の残高はゼロ。決算のあとに現金過不足は残らないんだね。

原因がわからなくても、雑損か雑益にして必ず決着をつけるんだね。なんだかスッキリした!

そうだね。最後に、同じ「いったん仮に置く」仲間の仮払金・仮受金と見くらべて、頭の中を整理しておこう。

仮払金・仮受金との整理

仮払金・仮受金(既出)現金過不足(今回)
仮に置く場面 内容や金額が未確定のお金を払った・受け取ったとき 帳簿残高と実際有高が合わないことに気づいたとき
はっきりしたら 正しい科目に振り替える 正しい科目に振り替える
決算まで不明なら 雑損(費用)・雑益(収益)に振り替える
※どちらも「いったん仮に置いておいて、はっきりしたら振り替える」仲間。現金過不足には、決算で強制的に決着をつけるゴールが用意されているのが特徴だよ。

「仮に置く→振り替える」の型は同じで、現金過不足には決算というタイムリミットがあるんだね。

そのとおり。コツがつかめたか、確認問題で試してみよう。

確認問題

それでは6問で確認してみよう。空欄をタップすると答えが出るよ。まずは「現金を実際有高に合わせる」から考えてね。問6は前回の内容とつながる発展問題。全部開くと解説リンクが出てくるよ。

問1 実際のお金が少なかったとき

問1
現金の帳簿残高は50,000円であるが、実際有高を調べたところ48,000円であった。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:実際にあるお金が事実だよ。帳簿の現金を実際有高に合わせるには、現金を増やす?減らす?

問2 実際のお金が多かったとき

問2
現金の帳簿残高は30,000円であるが、実際有高を調べたところ33,000円であった。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:今度は実際のお金のほうが多いよ。現金を実際有高に合わせたら、差額はどの科目で、どちら側に置くんだったかな。

問3 不足の原因が判明したとき

問3
問1で生じた現金過不足2,000円のうち、1,500円は従業員の出張にともなう電車代(旅費交通費)の支払いの記帳もれであることが判明した。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:原因がわかったら、判明した分だけ現金過不足を減らして、本来記録すべきだった科目に振り替えるよ。現金はもう直してあるから動かさないでね。
📖 旅費交通費など費用の科目の解説はこちら → 【簿記3級・015】費用の勘定科目と仕訳をやさしく解説(前編)

問4 過剰の原因が判明したとき

問4
問2で生じた現金過不足3,000円のうち、2,800円は売掛金を現金で回収した際の記帳もれであることが判明した。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:売掛金を回収したのに、減らすのを忘れていたよ。あとから売掛金(資産)を減らして、貸方に置いていた現金過不足も減らそう。

問5 決算まで原因不明のとき

問5
決算日をむかえたが、現金過不足の借方残高500円(問1の2,000円のうち原因不明の分)については、原因が判明しなかった。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:お金が足りないまま原因不明だったよ。足りない分は会社の損として、どの科目に振り替えるんだったかな。
📖 ここを読み返そう → 決算まで原因不明のとき

問6 不足の原因は…あの科目?(発展)

問6(発展)
現金過不足の借方残高1,000円について原因を調べたところ、従業員が負担すべき生命保険料1,000円を現金で立て替えて支払った際の記帳もれであることが判明した。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:本来は従業員が払うべきお金を、会社が代わりに払っていたよ。あとで返してもらえるお金は、どの科目で記録するんだったかな。前回の復習だよ。

問6、原因が「立て替えたお金の書き忘れ」なら、振り替える先は立替金なんだね。原因しだいで、いろんな科目が相手になるんだ。

よく気づけたね。「本来どんな仕訳をするはずだったか」を考えれば、振り替える先はおのずと決まるよ。

まとめ

現金過不足:帳簿残高と実際有高が合わないときの差額を、いったん仮に置いておく勘定科目。

不一致を見つけたとき:帳簿を実際有高に合わせる。先に現金の増減を書いて、現金過不足は空いた側に置く。

原因が判明したとき:判明した分だけ、現金過不足から正しい科目に振り替える。現金はもう直してあるので動かさない。

決算まで原因不明のとき:足りない分は雑損(費用)、多い分は雑益(収益)に振り替えて、現金過不足の残高をゼロにする。

お財布の中身と記録が合わないのは、ぼくもよくあるなあ…。会社はちゃんと原因を調べて、最後は決着までつけてるんだね。えらい!

それはよかった。

次回は株式会社の設立について学ぼう。ここまでは会社の日々の取引を仕訳してきたけど、今度はその会社が生まれるとき、株式を発行してお金を集めるところからのお話だよ。

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