【簿記3級・031】手形貸付金・手形借入金をやさしく解説
この記事について
前回は貸付金(かしつけきん)・借入金(かりいれきん)として、お金そのものを貸し借りしたときの処理を学びました。
今回は手形貸付金(てがたかしつけきん)・手形借入金(てがたかりいれきん)です。お金の貸し借りで、「借用証書」のかわりに「約束手形」を使う場合の処理を学びます。前々回の約束手形と前回の貸付金・借入金が合体したテーマなので、どちらの復習にもなりますよ。
- 手形貸付金(資産)・手形借入金(負債)がどんなものかがわかります
- 約束手形を受け取った側・振り出した側、それぞれの仕訳ができます
- 利息を先に差し引く(利息の先取り)処理と、その計算ができます
ふつうの貸付金・借入金とのちがいは、おもに「証書が約束手形になること」です。利息を先に差し引く(先取り)パターンもよく出るので、そこもあわせて押さえましょう。
手形貸付金・手形借入金とは

前回はお金そのものの貸し借りだったよね。今回の「手形貸付金」って、それと何がちがうの?

いい質問だね。お金の貸し借りで、借用証書のかわりに約束手形を使うのが今回のテーマだよ。前々回の約束手形と、前回の貸付金が合体した感じなんだ。

あ、約束手形ってこの前やったやつだ!じゃあ科目も、貸す側と借りる側で分かれるの?

そうそう。立場でこう分かれるよ。
- 約束手形を受け取った側(お金を貸した側)→手形貸付金(てがたかしつけきん/資産)
…あとで手形の額面を受け取れる権利 - 約束手形を振り出した側(お金を借りた側)→手形借入金(てがたかりいれきん/負債)
…あとで手形の額面を支払わなければならない義務

借りる側が約束手形を「振り出す」ところは、前々回の約束手形と同じだよ。まずは図で全体の流れを見てみよう。
← 約束手形(額面=元本+利息)を振り出す
(手形決済)

前回の貸付金の図とそっくり!でも利息が②じゃなくて①にあるね。最初に差し引くんだ。

そこが今回のポイント。利息を貸し借りのときに先取りするのが、手形貸付金でよく出るパターンなんだ。

先取りなんて方法があるんだね!前回の後からもらうパターンとはちょっと違うんだね。でも利息の名前は受取利息と支払利息で前と一緒だね。

そう。意味も前回と同じで、立場でこう分かれるよ。
- 貸した側の利息=もうけ→受取利息(うけとりりそく/収益)
- 借りた側の利息=かかった費用→支払利息(しはらいりそく/費用)

それじゃあ、貸した側から順番に仕訳を見ていこう。
お金を貸した側(手形貸付金)の処理
お金を貸したとき(約束手形を受け取る・利息を先に差し引く)

当社がA社にお金を貸して、約束手形を受け取る場面だよ。利息の計算は前回と同じで、利息=元本 × 年利率 × 期間だね。

利息を出すと、手形の額面はその分だけ大きくなるんだね。

そう、額面=元本+利息だね。じゃあ仕訳を見てみよう。
約束手形の額面=元本1,000,000円+利息30,000円=1,030,000円
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 手形貸付金 | 1,030,000 | 現金 | 1,000,000 |
| 受取利息 | 30,000 |

渡す現金は元本だけで、手形貸付金は利息込みの額面なんだね。

そのとおり。利息を貸した時点で受取利息として計上するのが「先取り」だよ。手形貸付金でよく出るパターンなんだ。
手形が決済されたとき(返済を受ける)

次は満期日(返済の期日)。約束手形の額面が、当社の当座預金口座に入金される場面だよ。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 1,030,000 | 手形貸付金 | 1,030,000 |

先取りしてるから、決済のときは利息が出てこないんだね。

そうそう。だから決済は、手形貸付金が減って額面が入ってくるだけ。シンプルだね。
お金を借りた側(手形借入金)の処理
お金を借りたとき(約束手形を振り出す・利息を先に差し引かれる)

今度は反対の立場。当社がB銀行から借りて、約束手形を振り出す場面だよ。利息の計算は貸したときと同じだね。
約束手形の額面=元本1,000,000円+利息30,000円=1,030,000円
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 1,000,000 | 手形借入金 | 1,030,000 |
| 支払利息 | 30,000 |

例題①の左右がそっくり入れかわってる!手形借入金が額面で、入ってくる現金は元本だけなんだね。

その通り。同じ1件を借りた側から見ているからね。差額の利息は、借りた側だから支払利息(費用)になるよ。
手形を決済したとき(返済する)

最後は満期日。振り出した約束手形の額面が、当社の当座預金口座から引き落とされる場面だよ。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 手形借入金 | 1,030,000 | 当座預金 | 1,030,000 |

こっちも決済のときは利息が出てこないんだね。借入時にもう払ってるから。

その通り。決済は、手形借入金が減って額面を支払うだけ。例題②の鏡だよ。ここまでくれば、あとは前回との「ちがい」を整理するだけだね。
ふつうの貸付金・借入金とのちがい

前回のふつうの貸付金・借入金と、今回の手形のやつ、結局どこがちがうの?

いちばんのちがいは、証書が借用証書から約束手形に変わること。だから借りる側は手形を「振り出す」んだ。表で見くらべてみよう。
| ふつうの貸付金・借入金(前回) | 手形貸付金・手形借入金(今回) | |
|---|---|---|
| 使う証書 | 借用証書 | 約束手形 |
| 借りる側の動作 | 借用証書を渡す | 約束手形を振り出す |
| 使う科目 | 貸付金(資産) 借入金(負債) |
手形貸付金(資産) 手形借入金(負債) |

証書が約束手形になって、科目に「手形」がつくんだね。ところで利息、今回はずっと先取りだったけど、いつもそうなの?

いい質問。実は先取りは絶対じゃないんだ。手形の額面に利息を含むかどうかで、2パターンあるよ。
- 額面に利息を含む(額面=元本+利息)
→貸し借りのときに利息を計上(先取り)。決済のときは利息なし。【例題①〜④】 - 額面に利息を含まない(額面=元本)
→決済のときに利息を計上。前回の貸付金・借入金とまったく同じ。【下の補足例】

見分け方はかんたん。手形の額面に利息が乗っているか、それだけだよ。
利息を額面に含めない場合(決済のときに利息)

含めない場合の仕訳も見ておこう。貸した側の例だよ。前回の貸付金とそっくりなんだ。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 手形貸付金 | 1,000,000 | 現金 | 1,000,000 |
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 1,030,000 | 手形貸付金 | 1,000,000 |
| 受取利息 | 30,000 |

ほんとだ、手形貸付金に変わっただけで、あとは前回と同じだ!

そう。だから「額面に利息が乗っているか」で見分ければ、AかBか迷わないよ。

利息の計算は、どっちのパターンでも同じ?

同じだよ。元本×年利率×期間で、1年未満なら月は÷12・日は÷365で調整するのも前回どおり。それじゃ、確認問題で手を動かそう。
確認問題

それでは4問で確認してみよう。空欄をタップすると答えが出るよ。「自分は貸した側か借りた側か」「利息は先取り」を意識して、決済のときは利息が出ないことに注意してね。全部開くと、解説リンクが出てくるよ。
問1 お金を貸したとき(利息の先取り)
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |
| ? | ? |
問2 手形が決済されたとき(貸した側)
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |
問3 お金を借りたとき(月割)
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |
| ? | ? |
問4 手形を決済したとき(借りた側)
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |

できた!「貸した側=手形貸付金・受取利息」「借りた側=手形借入金・支払利息」って区別できれば、あとは額面と利息を計算するだけだね。

その通り!まず立場を見分けて、手形貸付金・手形借入金は額面でのせる。利息は、額面に乗っていれば先取り、乗っていなければ決済時。見分けられれば、もう大丈夫だよ。
まとめ
・手形貸付金(資産):約束手形を受け取って(お金を貸して)、あとで額面を受け取れる権利。
・手形借入金(負債):約束手形を振り出して(お金を借りて)、あとで額面を支払う義務。
・利息は2パターン:手形の額面に利息を含むなら貸し借りのときに計上(先取り)、含まないなら決済のときに計上(前回と同じ)。どちらも受取利息(収益)・支払利息(費用)を使う。
・手形の額面が手形貸付金・手形借入金になる。先取りの場合は額面=元本+利息で、実際に動くお金は元本だけ。
・決済(返済)のとき:先取りずみなら利息は出てこない(手形貸付金・手形借入金が減るだけ)。先取りしていなければ、ここで受取利息・支払利息を計上する。
・ふつうの貸付金・借入金とのちがいは、証書が約束手形になること(借りる側は手形を振り出す)。利息=元本×年利率×期間の計算式や月割・日割は前回と同じ。

前々回の約束手形と前回の貸付金が合体したテーマって、ほんとだったね。両方がつながって覚えやすかったー。

それはよかった。
次回も今回の流れが続くよ。役員貸付金・役員借入金について学ぼう。会社が自分の役員にお金を貸したり、役員から借りたりしたときの処理で、今回までの貸付金・借入金のなかまなんだ。
不安だったら次に進む前に見返してみてね。

