【簿記3級・029】電子記録債権・電子記録債務をやさしく解説
この記事について
前回は約束手形(支払手形・受取手形)として、手形を振り出す側と受け取る側、それぞれの処理を学びました。
今回は電子記録債権(でんしきろくさいけん)・電子記録債務(でんしきろくさいむ)です。これは、前回の手形のしくみを「紙ではなく電子データで記録する」新しいやり方です。手形の考え方がそのまま活きるので、安心して読み進めてくださいね。
- 電子記録債権・電子記録債務がどんなものかがわかります
- 支払う側の「電子記録債務(負債)」の仕訳ができます
- 受け取る側の「電子記録債権(資産)」の仕訳ができます
手形の電子版、と思って読むとスッと頭に入ってきますよ。
電子記録債権・電子記録債務とは

「電子記録債権」って、なんだか急にデジタルっぽい名前が出てきたね。むずかしそう…。

名前は長いけど、中身は前回の手形とそっくりだよ。ひとことで言うと、「あとで払う・あとでもらう」という約束を、紙ではなくインターネット上のデータで記録するしくみなんだ。
専用のネットワーク(でんさいネットなどと呼ばれるよ)に「だれが・だれに・いつ・いくら払う」という記録を残すんだ。紙の手形を発行したり郵送したりする手間がなくなる、便利なしくみだね。

なるほど、手形の「紙」が「データ」になっただけなんだ。じゃあ、ここでも2人の登場人物がいるの?

その通り、よく覚えてたね。手形のときは「振り出す側」と「受け取る側」だったよね。電子記録でも考え方は同じで、こう呼ぶよ。
・あとで代金を支払う側 → 債務者(さいむしゃ)。使う科目は電子記録債務(負債)
・あとで代金を受け取る側 → 債権者(さいけんしゃ)。使う科目は電子記録債権(資産)
「債務=払う義務」「債権=もらえる権利」だよ。図で全体を見てみよう。
に記録
通して
自動で

ほんとだ、手形の図とそっくり!支払う側が負債、受け取る側が資産になるのも同じだね。

そう、だから手形が理解できていれば電子記録もこわくないんだ。ただし、ひとつだけ手形と違うポイントがあるよ。
手形は商品を仕入れた・売り上げたその場で振り出したよね。でも電子記録債権・債務は、すでにある買掛金・売掛金を「電子記録に置きかえる」かたちで発生することが多いんだ。ここがポイントだから、仕訳でしっかり見ていこう。
まずは支払う側(債務者)から見ていくよ。
債務者(支払う側)の処理
発生記録をしたとき

たとえば、当社が仕入先に対して買掛金を抱えていて、その支払いを電子記録債務に置きかえる場面を考えてみよう。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 200,000 | 電子記録債務 | 200,000 |

あれ、ここでも「現金」とか「当座預金」は出てこないんだね。

いいところに気づいたね。発生記録をした時点では、まだお金は払っていないよね。「あとで払う約束」を、買掛金から電子記録債務に切りかえただけ。だからお金はまだ動かないんだ。
手形のときは「仕入/支払手形」だったけど、電子記録では「買掛金/電子記録債務」。すでにある買掛金を消して、電子記録債務に乗りかえるイメージだよ。
支払期日に決済したとき

では、約束した支払期日がやってきたよ。電子記録債務の代金は、登録した当座預金などの口座から自動で引き落とされるんだ。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 電子記録債務 | 200,000 | 当座預金 | 200,000 |

発生記録のときに貸方に書いた電子記録債務を、今度は借方に書いて消すんだね。前回の支払手形の決済とまったく同じだ!

その通り!「支払手形」を「電子記録債務」に置きかえただけで、考え方はそっくりそのままなんだ。負債を消すときは発生したときと反対側、だったね。
債権者(受け取る側)の処理
発生記録の通知を受けたとき

今度は反対の立場、代金を受け取る側を見ていこう。当社が得意先に売掛金を持っていて、それが電子記録債権に置きかわる場面だよ。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 電子記録債権 | 200,000 | 売掛金 | 200,000 |

売掛金が電子記録債権に乗りかわるんだね。さっきの債務者側の「買掛金→電子記録債務」とちょうど鏡みたいだ。

そう、きれいに対になっているんだ。売掛金が「掛けで売ったときの権利」なら、電子記録債権は「それを電子記録に置きかえた権利」。どちらも資産だよ。
電子記録のほうが支払期日がはっきりしていて、紙のように紛失する心配もない、という違いがあるんだ。
支払期日に入金されたとき

支払期日になると、電子記録債権の代金が当座預金などの口座に自動で入金されるよ。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 200,000 | 電子記録債権 | 200,000 |

受け取ったときに借方に書いた電子記録債権を、入金されたら貸方に書いて消す。さっきの電子記録債務とちょうど反対だ!

そう、債務者と債権者できれいに対になっているんだ。ひとつ補足すると、入金先や引き落とし先は当座預金とはかぎらないよ。普通預金のこともあるから、試験では問題文に書いてある口座に従ってね。
それでは、ここで4つの場面を表で整理しておこう。
| 債務者(支払う側) | 債権者(受け取る側) | |
|---|---|---|
| 発生記録をするとき | 買掛金(負債)の減少 → 借方 電子記録債務(負債)の増加 → 貸方 |
電子記録債権(資産)の増加 → 借方 売掛金(資産)の減少 → 貸方 |
| 支払期日に決済するとき | 電子記録債務(負債)の減少 → 借方 (当座預金などの口座から支払う) |
電子記録債権(資産)の減少 → 貸方 (当座預金などの口座に入金される) |

表にすると、債務者と債権者がちょうど鏡みたいになってるのがよくわかるね!前回の手形の表ともそっくりだ。

同じ電子記録のやりとりを、両方の立場から見ているからね。手形と同じで「自分はどっちの立場か」をまず確認するのがコツだよ。
約束手形とのちがい

考え方は手形とそっくりってわかったけど、じゃあ手形と電子記録は、結局なにがちがうの?

いい質問だね。仕訳の考え方は同じだけど、しくみの面でいくつか違いがあるよ。いちばんの違いは「紙か、データか」なんだ。
・約束手形 → 紙の証券を作って、相手に渡す
・電子記録 → ネット上のデータとして記録する(紙を作らない)
手形の仕訳があやふやなら、約束手形の記事で復習してから読むと、違いがよりはっきりするよ。
| 約束手形 | 電子記録債権・債務 | |
|---|---|---|
| 記録のかたち | 紙の証券を作る | ネット上のデータで記録 |
| 支払う側の科目 | 支払手形(負債) | 電子記録債務(負債) |
| 受け取る側の科目 | 受取手形(資産) | 電子記録債権(資産) |
| 発生のしかた | 仕入・売上と同時に振り出すことが多い | すでにある買掛金・売掛金を置きかえることが多い |

仕訳の「増えたら/減ったら」の考え方は同じで、科目の名前と、発生のしかたがちょっと違うんだね。

まさにそこがポイント。だから「これは支払う側?受け取る側?」「もう発生してる買掛金・売掛金はある?」を確認すれば、迷わず仕訳できるようになるよ。
確認問題

それでは、今日学んだ内容を3問で確認してみよう。空欄をタップすると答えが表示されるよ。まず「自分は支払う側(債務者)か、受け取る側(債権者)か」を考えてから、手を動かしてみてね。すべての空欄を開くと、解説記事へのリンクが出てくるよ。
問1 発生記録をしたとき(債務者)
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |
問2 発生記録の通知を受けたとき(債権者)
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |
問3 支払期日に入金されたとき(債権者)
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| ? | ? | ? | ? |

できた!「支払う側=電子記録債務」「受け取る側=電子記録債権」って区別できれば、あとは手形と同じで増える・減るで貸借を決めるだけだね。

その通り!まず立場を見分けて、もとの買掛金・売掛金から置きかえる、という流れがつかめれば、電子記録の問題はもう大丈夫だよ。
まとめ
・電子記録債権・債務:手形のしくみを、紙ではなくネット上のデータで記録するもの。あとで支払う側が債務者、受け取る側が債権者
・支払う側(債務者):発生記録をしたとき→買掛金を減らし電子記録債務(負債)を増やす(貸方)。支払期日に決済したとき→電子記録債務の減少(借方)/預金口座から支払う
・受け取る側(債権者):発生記録の通知を受けたとき→電子記録債権(資産)を増やし(借方)売掛金を減らす。支払期日に入金されたとき→電子記録債権の減少(貸方)/預金口座に入金
・同じ1件の記録でも、支払う側には「電子記録債務(負債)」、受け取る側には「電子記録債権(資産)」になる(手形の支払手形・受取手形と同じ関係)
・発生記録の時点ではお金は動かない。実際にお金が動くのは支払期日
・手形との違い:手形は「紙の証券」を作るが、電子記録は「ネット上のデータ」。また電子記録は、すでにある買掛金・売掛金を置きかえる形で発生することが多い

手形の電子版だと思ったら、ぜんぜんむずかしくなかった!次回はなにを学ぶの?

次回は貸付金・借入金だよ。お金を「貸した」「借りた」ときの債権・債務を学ぶんだ。
商品の売り買いではなく、お金そのものの貸し借り。利息の考え方も出てくるよ。お楽しみにね。

