【簿記3級・027】固定資産(後編)売却と資本的支出をやさしく解説
この記事について
前回は固定資産(前編)として、取得原価の考え方と、減価償却(定額法・間接法)の計算と仕訳を学びました。
今回は固定資産(後編)です。固定資産を売却したときの仕訳と、資本的支出・収益的支出のちがいを学び、最後に確認問題で仕上げましょう。
- 固定資産を売却したときの仕訳(固定資産売却益・固定資産売却損)がわかります
- 期中に売却したときの月割計算ができます
- 資本的支出と収益的支出を区別して仕訳ができます
前編の「帳簿価額」「減価償却累計額」を使って進めていきます。まだの方は前編から読むのがおすすめです。

固定資産の売却
売却の基本:帳簿価額との差額が損益になる

前回の最後に聞いた「使い終わる前に売ったらどうなるの?」のお話だね!

そうだよ。会社では、古くなった備品や営業車を買い替えのタイミングで売ることがよくあるんだ。今回はそのときの仕訳を学ぶよ。

売れたお金は、そのまま会社のもうけになるのかな?

そこが今回のポイントだよ。固定資産には、前編で学んだ帳簿価額(帳簿の上での今の価値)があったよね。
売却のときは、売れた金額と帳簿価額を比べて、その差額だけが損益になるんだ。
売却価額 < 帳簿価額 → 差額は固定資産売却損(費用)

帳簿価額より高く売れたら「売却益」、安くしか売れなかったら「売却損」…そのままの名前で覚えやすいね!
期首に売却したとき

前編のコピー機に、もう一度登場してもらおう。取得原価320,000円・耐用年数4年・残存価額0円で、毎年80,000円ずつ減価償却していたね。
3年目の決算が終わった時点で、減価償却累計額は240,000円、帳簿価額は80,000円。このコピー機を4年目の期首に売却するよ。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 240,000 | 備品 | 320,000 |
| 現金 | 70,000 | ||
| 固定資産売却損 | 10,000 |

うわー、行が多い仕訳だね!?どこから考えればいいの?

一つずつ見れば大丈夫。やることは3つだけだよ。
① 備品320,000円を貸方に書いて、帳簿から消す
② 備品減価償却累計額240,000円を借方に書いて、帳簿から消す
③ 受け取ったお金を記録して、差額を売却損(または売却益)にする

減価償却累計額って、いつもは貸方に積み上がっていたのに、今回は借方に書くんだね。

そうなんだ。売却したらこのコピー機の記録は全部帳簿から消す必要があるよね。貸方に積み上がっていたものを消すには、反対側の借方に書けばいいんだよ。
備品(資産)も同じ理屈で、借方にあったものを貸方に書いて消しているんだ。

なるほどー。じゃあ、もし帳簿価額より高く売れたらどうなるの?

同じコピー機が100,000円で売れた場合で見てみよう。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 240,000 | 備品 | 320,000 |
| 現金 | 100,000 | 固定資産売却益 | 20,000 |

売却損は借方(費用)、売却益は貸方(収益)。差額がどっちに出るかで置く場所が変わるんだね。

その通り!
仕訳は必ず借方と貸方の合計が一致するから、最後に合わない差額を売却損か売却益で埋めると考えてもいいよ。借方が足りなければ売却損、貸方が足りなければ売却益だね。
期中に売却したとき(月割計算)

ねえねえ、売るタイミングって期首だけじゃないよね?年度の途中で売ったらどうするの?

鋭い質問だね!
期の途中で売却したときは、期首から売却した月までの減価償却費を月割で計上するんだ。
売却した年も、売る日までは固定資産を使っていたよね。だからその月数分だけ、当期の減価償却費を計上するんだよ。

コピー機を4年目の9月30日に売却した場合で、図にしてみるよ。会計期間は4月1日から3月31日とするね。
240,000円
減価償却費
40,000円
40,000円
減価償却なし
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 240,000 | 備品 | 320,000 |
| 減価償却費 | 40,000 | 固定資産売却益 | 20,000 |
| 未収入金 | 60,000 | ||

借方に「未収入金」っていう初めての科目がある!
代金をあとで受け取るなら、売掛金じゃダメなの?

前編で「商品以外のものを後払いで買ったときは、買掛金ではなく未払金」と学んだのを覚えているかな?
未収入金はその反対バージョンだよ。商品以外のものを売って、代金をあとで受け取るときは「未収入金」(資産)を使うんだ。売掛金は商品を売ったときの専用科目だからね。

買掛金と未払金の関係と同じなんだね。セットで覚えちゃおう。

あと、月数の数え方にも注意してね。期首が4月1日で9月30日に売却なら、4・5・6・7・8・9で6か月。指を折って数えれば間違えないよ。
資本的支出と収益的支出

ところでさ、固定資産って長く使うものでしょ?途中で修理したり、リフォームしたりすることもあるよね。そういうお金はどう記録するの?

それが今回のもう一つのテーマだよ。固定資産にお金をかけたときは、その目的によって処理が2つに分かれるんだ。
資本的支出と収益的支出と言うよ。表で比べてみよう。
| 資本的支出 | 収益的支出 | |
|---|---|---|
| どんな支出 | 固定資産の価値を高める・使える年数を延ばすための支出(改良) | 固定資産を元の状態に戻す・維持するための支出(修繕) |
| 例 | 建物の増築、耐震補強工事、エレベーターの設置 | 壁の塗り直し、割れた窓ガラスの取り替え、定期メンテナンス |
| 処理 | 固定資産の取得原価に加える(建物などの資産の科目) | 修繕費(費用の科目)で記録する |

名前がまぎらわしいよー!どっちも「○○的支出」だし!

覚え方のコツを教えるね。
良くする(価値アップ)=資本的支出 → 資産にプラス
直す(元どおり)=収益的支出 → 修繕費(費用)
「価値が上がったなら、それは資産の一部になる」「元に戻しただけなら、その期の費用」と考えると整理しやすいよ。
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 建物 | 400,000 | 未払金 | 500,000 |
| 修繕費 | 100,000 |

どっちの支出なのかって、試験では自分で判断しないといけないのかな?

簿記3級では「改良のため」「修繕のため」「資本的支出」「収益的支出」のように、問題文に判断材料が書いてあることがほとんどだよ。
だから言葉に注目して、改良なら資産、修繕なら修繕費と読み分けられれば大丈夫だよ。
確認問題

それでは、今日学んだ内容を3問で確認してみよう。ヒントを見ながらでもいいから、まず自分の手で仕訳を書いてみてね。
問1 期首の売却
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 車両運搬具減価償却累計額 | 500,000 | 車両運搬具 | 800,000 |
| 現金 | 250,000 | ||
| 固定資産売却損 | 50,000 |
問2 期中の売却
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 360,000 | 備品 | 600,000 |
| 減価償却費 | 80,000 | ||
| 未収入金 | 130,000 | ||
| 固定資産売却損 | 30,000 |
問3 資本的支出と収益的支出
| 借方(左) | 金額 | 貸方(右) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 建物 | 300,000 | 当座預金 | 400,000 |
| 修繕費 | 100,000 |

3問ともできたよ!売却の仕訳は行が多いけど、「消す・記録する・差額を埋める」の順番で考えたら迷わなかった!

すばらしい!その考え方が身についていれば、固定資産の売却はもう怖くないよ。
まとめ
・売却の損益:売却価額と帳簿価額(取得原価 ー 減価償却累計額)の差額。高く売れたら固定資産売却益(収益)、安かったら固定資産売却損(費用)
・売却の仕訳:固定資産の科目は貸方に、減価償却累計額は借方に書いて、両方まるごと帳簿から消す
・期中売却:期首から売却した月までの減価償却費を月割(1年分 × 月数 ÷ 12か月)で計上する
・商品以外の代金をあとで受け取るときは未収入金(商品の売掛金ではない。未払金の反対バージョン)
・資本的支出(改良・価値アップ)→ 固定資産の取得原価に加える/収益的支出(修繕・元どおり)→ 修繕費(費用)

固定資産、前編・後編でしっかり学べたね。やりきった気分!次回はなにを学ぶの?

次回は約束手形だよ。代金の支払いに使う「手形」という証券のお話だね。
約束手形とはなにかから始めて、手形を振り出す側と受け取る側、それぞれの処理を学ぶよ。確認問題もあるから、お楽しみにね。

