簿記3級

【簿記3級・028】約束手形(支払手形・受取手形)をやさしく解説

はるり

この記事について

前回は固定資産(後編)として、固定資産を売却したときの仕訳と、資本的支出・収益的支出のちがいを学びました。

今回は約束手形(やくそくてがた)です。約束手形とはどんなものかを知り、手形を振り出す側(支払う側)と受け取る側、それぞれの処理を学んで、最後に確認問題で仕上げましょう。

  • 約束手形がどんな証券なのかがわかります
  • 手形を振り出す側の「支払手形(負債)」の仕訳ができます
  • 手形を受け取る側の「受取手形(資産)」の仕訳ができます

お金の支払い方法のひとつとして、これまで学んだ現金・当座預金・掛けの仲間が増えるイメージです。

約束手形とは

「手形」って言葉、ニュースとかで聞いたことあるけど、いまいちピンとこないなあ。なんだか難しそう…。

大丈夫、ひとつずつ見ていけばかんたんだよ。約束手形は、「いつ・いくら払います」と約束した紙の証券のことなんだ。

商品を買った会社が「○月○日に、この金額をきちんと支払います」と約束して、相手に渡す紙だと思ってね。

それって、掛けで買うのと何がちがうの?「あとで払う」のは同じだよね?

いいところに気づいたね。買掛金(掛け)も「あとで払う」点は同じなんだ。でも手形には2つの特徴があるよ。

① 支払う期日(満期日)がはっきり決まっている
② 紙の証券になっていて、買掛金よりも支払いの約束が強い

だから取引先も安心して受け取れるんだよ。

なるほど。約束を「紙」にして、きちんと期日まで決めた…という感じだね。

その通り。そして手形には2人の登場人物がいるよ。手形を書いて渡す人を振出人(ふりだしにん)、受け取る人を受取人(うけとりにん)と呼ぶんだ。図で見てみよう。

📝 約束手形の2つの場面
① 手形をやりとりするとき(商品売買など)
振出人(支払う側)支払手形(負債)が増える
手形を
振り出す
受取人(受け取る側)受取手形(資産)が増える
② 満期日に決済するとき
振出人当座預金から支払う → 支払手形が減る
銀行を
通して
受取人預金口座に入金 → 受取手形が減る
同じ1枚の手形でも、振り出した人にとっては「支払手形(負債)」、受け取った人にとっては「受取手形(資産)」になるよ。

同じ1枚の紙なのに、振り出した人と受け取った人で、使う科目の名前が変わるんだね!

そこが今回いちばん大事なところだよ。立場で科目が決まるんだ。

・振り出した人(支払う側)→ あとで払う義務だから支払手形(負債)
・受け取った人(受け取る側)→ あとでもらえる権利だから受取手形(資産)

まずは振り出す側から見ていこう。

振出人(支払う側)の処理

手形を振り出したとき

たとえば、当社が商品を仕入れて、その代金を約束手形で支払う場面を考えてみよう。

例題① 手形を振り出したとき
商品300,000円を仕入れ、代金は約束手形を振り出して支払った。
借方(左)金額貸方(右)金額
仕入 300,000 支払手形 300,000
✏️ 約束手形を振り出すと、あとで代金を支払う義務(負債)が生まれるよ。この義務が「支払手形」。負債が増えるから貸方に書くんだ。

あれ、ここで「現金」とか「当座預金」は出てこないんだね。

そうなんだ。手形を振り出した時点では、まだお金は払っていないよね。「あとで払う約束」をしただけ。だから現金や当座預金は動かないんだ。

掛けで買ったときに「買掛金」を使ったのと同じ考え方だよ。買掛金が手形に変わったイメージだね。

手形代金を支払ったとき(満期日)

では、約束した満期日がやってきたよ。いよいよ手形代金を支払う場面だね。手形の代金は、ふつう当座預金から支払われるんだ。

例題② 手形代金を支払ったとき
かつて振り出した約束手形300,000円が満期日をむかえ、当座預金口座から支払われた。
借方(左)金額貸方(右)金額
支払手形 300,000 当座預金 300,000
✏️ 満期日にお金を払うと、「あとで払う義務」がなくなるよね。だから支払手形(負債)を減らす=借方に書く。そして当座預金が減るから貸方だね。

振り出したときに貸方に書いた支払手形を、今度は借方に書いて消すんだね。固定資産の売却で累計額を反対側に書いたのと似てる!

いい気づき!負債や資産を「消す」ときは反対側に書く、という考え方は共通だよ。発生したときと反対側、と覚えておこう。

受取人(受け取る側)の処理

手形を受け取ったとき

今度は反対の立場、手形を受け取る側を見ていこう。当社が商品を売り上げて、代金として約束手形を受け取る場面だよ。

例題③ 手形を受け取ったとき
商品200,000円を売り上げ、代金として約束手形を受け取った。
借方(左)金額貸方(右)金額
受取手形 200,000 売上 200,000
✏️ 約束手形を受け取ると、あとで代金をもらえる権利(資産)が生まれるよ。これが「受取手形」。資産が増えるから借方に書くんだ。

売掛金とよく似てるね。「あとでお金をもらえる」ってところが。

その通り!売掛金が「掛けで売ったときの権利」なら、受取手形は「手形で受け取ったときの権利」。どちらも資産だよ。

手形のほうが期日がはっきりしていて確実、という違いがあるんだ。

手形代金を受け取ったとき(取立て)

満期日になると、手形の代金が当座預金に入金されるよ。これを手形の取立て(とりたて)というんだ。

例題④ 手形代金を受け取ったとき
以前受け取った約束手形200,000円が満期日をむかえ、当座預金口座に入金された。
借方(左)金額貸方(右)金額
当座預金 200,000 受取手形 200,000
✏️ 満期日にお金を受け取ると、「あとでもらえる権利」がなくなるよね。だから受取手形(資産)を減らす=貸方に書く。そして当座預金が増えるから借方だね。

受け取ったときに借方に書いた受取手形を、入金されたら貸方に書いて消す。さっきの支払手形とちょうど反対だ!

そう、きれいに対になっているんだ。

ひとつ補足すると、入金先は当座預金とはかぎらないよ。普通預金に入ることもあるから、試験では問題文に書いてある口座に従ってね。

それでは、ここで4つの場面を表で整理しておこう。

振出人(支払う側)受取人(受け取る側)
手形をやりとりするとき 支払手形(負債)の増加 → 貸方 受取手形(資産)の増加 → 借方
満期日に決済するとき 支払手形(負債)の減少 → 借方
(当座預金から支払う)
受取手形(資産)の減少 → 貸方
(当座預金などの口座に入金される)

表にすると、振出人と受取人がちょうど鏡みたいになってるのがよくわかるね!

同じ手形のやりとりを、両方の立場から見ているからね。「自分はどっちの立場か」をまず確認するのがコツだよ。

約束手形と小切手のちがい

そういえば、前に習った小切手も「紙でお金をやりとりする」感じだったよね。約束手形とは何がちがうの?

とても混同しやすいところだから、ここではっきりさせておこう。いちばんの違いは「お金になるタイミング」だよ。

・小切手 → 受け取った人が銀行に持っていけば、すぐに換金できる(今すぐお金になる)
・約束手形 → 満期日が来るまで待つ(将来お金になる)

もし小切手の仕訳があやふやなら、当座預金と小切手の記事で復習してから読むと、違いがよりはっきりするよ。

小切手約束手形
お金になるタイミング 今すぐ(銀行ですぐ換金できる) 将来の満期日(その日まで待つ)
受け取ったときの科目 現金(他人が振り出した小切手) 受取手形
性質のイメージ 現金の仲間(即時払い) 掛けの仲間(後払い)

受け取ったときの科目がちがうんだね。小切手は「現金」で、約束手形は「受取手形」…なんで分かれるの?

そこも「お金になるタイミング」で考えれば大丈夫。他人が振り出した小切手はすぐ換金できるから、現金とほぼ同じあつかいで「現金」で記録するんだ。

でも約束手形は満期日まで待つ必要があるよね。だから「あとでお金になる権利」として「受取手形(資産)」で記録するんだよ。

小切手は現金の仲間、約束手形は掛け(後払い)の仲間とイメージすると、迷わなくなるよ。

なるほど!どっちも紙でやりとりするけど、「今お金になるか/あとでお金になるか」で別物なんだね。

確認問題

それでは、今日学んだ内容を3問で確認してみよう。空欄をタップすると答えが表示されるよ。まず「自分は振り出す側か、受け取る側か」を考えてから、手を動かしてみてね。すべての空欄を開くと、解説記事へのリンクが出てくるよ。

問1 手形を振り出したとき

問1
商品400,000円を仕入れ、代金は約束手形を振り出して支払った。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:手形を振り出すと、あとで代金を支払う「義務」が生まれるね。それは資産・負債のどちらかな?まだお金は動いていないことにも注目しよう。

問2 手形を受け取ったとき

問2
商品250,000円を売り上げ、代金として約束手形を受け取った。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:手形を受け取ると、あとで代金をもらえる「権利」が生まれるね。それは資産・負債のどちらかな?掛けで売ったときに使った権利の科目と、立場が似ているよ。

問3 満期日に手形代金を支払ったとき

問3
以前に振り出していた約束手形400,000円が満期日をむかえ、当座預金口座から支払われた。このときの仕訳をしなさい。
借方(左)金額貸方(右)金額
💡 ヒント:満期日に代金を払うと、これまで持っていた「支払う義務」はどうなるかな?それを減らす(消す)には、発生したときと反対側のどちらに書くか考えてみよう。手形代金は、どの口座から引き落とされるんだったかな?

できた!「振り出す=支払手形」「受け取る=受取手形」って区別できれば、あとは増える・減るで貸借を決めるだけだね。

その通り!まず立場を見分けるクセがつけば、手形の問題はぐっと解きやすくなるよ。

まとめ

約束手形のポイント

約束手形:いつ・いくら払うかを約束した証券。書いて渡す人が振出人(支払う側)、受け取る人が受取人(受け取る側)

振り出す側:手形を振り出したとき→支払手形(負債)の増加(貸方)。満期日に支払ったとき→支払手形の減少(借方)/当座預金で支払う

受け取る側:手形を受け取ったとき→受取手形(資産)の増加(借方)。満期日に入金されたとき(取立て)→受取手形の減少(貸方)/預金口座に入金

・同じ1枚の手形でも、振り出した人には「支払手形(負債)」、受け取った人には「受取手形(資産)」になる

・手形を振り出した・受け取った時点ではお金は動かない。実際にお金が動くのは満期日

小切手との違い:小切手は「今すぐ換金できる紙」で受け取ったら現金、約束手形は「満期日に払う約束の紙」で受け取ったら受取手形

手形って、振り出す側と受け取る側で鏡みたいになってるのがおもしろかった〜。次回はなにを学ぶの?

次回は電子記録債権・電子記録債務だよ。今回の手形を「紙ではなく電子データで記録する」新しいしくみなんだ。

手形とよく似た考え方が出てくるから、今回の内容がそのまま活きるよ。お楽しみにね。

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